制作したWebサイトやシステムの保守を、長らく「必要になったら都度お見積り」という形で受けていた。これは一見フェアだが、実際に回してみると両方に負担がかかる。
- 依頼する側は、小さな修正を頼むたびに見積りを待つことになる。結果、気になっていても言い出さない
- 受ける側は、1件ごとに見積書を作る。作業10分の依頼でも事務は同じだけ発生する
- 「これは保守の範囲内か、別途費用か」の線引きを毎回相談することになる
この摩擦をなくすために、月額の継続契約に切り替えた。そのとき考えたことを残しておく。
何を「含む」かを先に決める
サブスクにするうえで一番重要なのがここだ。含む範囲が曖昧なままだと、結局また都度相談に戻る。
含めたのは、判断に迷わせないものを基準に選んだ。
- 表示崩れ・不具合の修正
- テキストや画像の差し替え
- CMS・プラグインの更新と、更新後の表示確認
- バックアップの取得と保管
- 障害時の一次対応
逆に、含めなかったもの。
- 新しいページや機能の追加(別途お見積り)
- デザインの全面的な作り直し
- 他社が作った部分の調査・改修
線引きの基準は「もともとの納品物を、納品時の状態に保つための作業か」に置いた。この一文で説明できるようにしておくと、判断が揺れない。
料金は、時間ではなく安心に対して付ける
「月に何時間まで」という決め方も検討したが、やめた。時間で区切ると、依頼する側が「これは何分かかりますか」と気にすることになり、結局また相談のコストが戻ってくる。
代わりに、依頼が来なかった月も同額という設計にした。何もなかった月の料金は、更新の適用と動作確認、バックアップ、そして「何かあればすぐ言える相手がいる」状態に対するものだと説明している。
実際、契約後にいちばん喜ばれたのは修正対応そのものではなく、「これ聞いていいのかな」と考えずに連絡できるようになったことだった。
既存のお客様への案内で気をつけたこと
いま都度契約で付き合いのある方に、いきなり「来月から月額です」と送るのは避けた。値上げの通知に見えるからだ。
実際に取った手順はこうだった。
- これまでの1年間で、そのお客様に発生した実際の作業と費用を集計する
- 月額に換算するといくらだったかを、そのまま提示する
- 新しい月額料金と並べて、どちらが得かをこちらで判断せずに見せる
- 都度契約のまま続ける選択肢も残す
数字を並べると、ほとんどの方が「こっちのほうが安いですね」と自分で判断された。こちらから勧める必要がなかった。集計の手間はかかるが、ここを省くと信頼のほうを失う。
切り替えてどうだったか
依頼の件数は増えた。それまで遠慮されていた小さな修正が来るようになったからだ。1件あたりの作業は小さいので、想定していたほど工数は増えなかった。
そして予想していなかった効果として、サイトの状態が良くなった。気づいた時点で直せるので、放置されて大きくなる問題が減った。結果的に、障害対応にかかる時間のほうが減っている。
料金体系の話は、お金の話に見えて、実際はどういう関係で仕事をするかの設計だったのだと後から思う。