「数年前に作ってもらったサイトを直したいが、当時の担当者と連絡がつかない」という相談を受けることがある。会社が畳まれていたり、担当者が退職していたり、理由はさまざまだ。
このとき慌てて新しいサイトを作り直す判断をする前に、確認すべきことがある。ドメインを失うと、これまで積み上げた検索評価とメールアドレスまで失うためだ。順番に整理する。
1. ドメインが誰の名義になっているかを調べる
最優先はここ。サイトの中身は最悪作り直せるが、ドメインを失うと取り返しがつかない。
https://whois.jprs.jp/(.jp の場合)や、レジストラの Whois 検索で自社ドメインを調べると、登録者名と有効期限が確認できる。見るべきは2点。
- 登録者が自社名義になっているか(制作会社の名義になっていることがある)
- 有効期限がいつか(更新が止まっていると、失効して第三者に取られる)
有効期限が近いのに支払い先が分からない場合、これがいちばん緊急度が高い。
ドメインが失効すると、一定期間の後に誰でも取得できる状態になる。以前のサイトに向けて張られたリンクや、そのドメインのメールアドレスも同時に使えなくなる。名刺・パンフレット・請求書に印刷したアドレスがすべて無効になるため、被害はWebサイトの範囲に留まらない。
2. どこのサーバーで動いているかを調べる
次に、実際のファイルがどこに置かれているか。契約者が分からなくても、技術的には調べられる。
# ドメインがどのIPアドレスを向いているか
nslookup example.com
# そのIPを持っているのがどの事業者か
whois 203.0.113.10
事業者名が分かれば、そこの契約者情報を辿れる。請求がどのクレジットカードに来ているかを経理で確認すると、契約者が判明することも多い。
3. サイトの中身を丸ごと保存する
サーバーの管理画面に入れるなら、何をするよりも先にバックアップを取る。
- FTPまたはファイルマネージャーで、公開ディレクトリを全部ダウンロード
- WordPress なら、phpMyAdmin からデータベースをエクスポート
入れない場合でも、公開されているページ自体は保存できる。原稿と写真だけでも手元に残しておけば、最悪の場合でも作り直しの材料になる。
4. どこまで引き継げるかを見極める
ここまで確認できたら、次の3つのどれになるかが決まる。
| 状況 | 取れる選択肢 |
|---|---|
| ドメインもサーバーも自社名義 | そのまま引き継げる。 管理情報を再発行して継続 |
| ドメインは自社、サーバーは相手名義 | サーバーだけ移す。 中身を新しいサーバーへ移設 |
| 両方とも相手名義 | ドメイン移管の交渉が必要。難しければ新ドメインを検討 |
いちばん多いのは真ん中で、この場合はドメインの向き先を変えるだけで済む。サイトを作り直す必要はない。
5. 直すか、作り直すかを判断する
引き継げると分かったうえで、次の判断になる。基準はシンプルで、いま動いているものが安全かどうかだ。
作り直しを検討したほうがいいのは、次のような場合。
- CMSやプラグインが何年も更新されておらず、脆弱性が放置されている
- スマートフォンでの表示が崩れている
- 作った本人しか構造を理解できない状態になっている
逆に、表示が問題なく更新も止まっていないなら、必要な部分だけ直すほうが早くて安い。全面作り直しは、選択肢のうちいちばん高くつく手段だと考えたほうがいい。
調査だけのご相談も受けています
「そもそも今どうなっているのか分からない」という段階からのご相談を受けています。現状を調べて、引き継げる部分と作り直したほうが早い部分を切り分けてご報告します。
調査の結果、作り直す必要がないと判断すれば、そうお伝えします。まずは今のドメインとサーバーがどうなっているかだけでも、確認しておく価値があります。